吉祥寺を歩いていると象のはな子のタイルが目に留まった。
以前、意図せずに偶然はな子の葬式たるものに居合わせたことがある。
大勢の人が華やかに見送っていた。
このはな子の名前に昔読んだ本のことを漠然と思い出した。
戦争と象の花子の切ないイメージと共に行き場がなく釈然としない気持ちが脳裏をよぎる。
花子は上野動物園の象で、はな子は武蔵野市の井の頭恩賜公園にある井の頭自然文化園の象だった。
花子には不遇の終焉、そして、はな子にも不遇の過去があった。
紆余曲折はあったろうがはな子は結果として吉祥寺のアイドルとして大切にされながら生を全うした。
セレモニーとなっていた葬式は2頭の不遇な象ためのハッピーエンディングのような気がした。
路上のタイル自体は以前からあるもののようだったが、このタイルと共にこれまでも、そしてこれからもひっそりと永く吉祥寺から日本を見守っていてくれることだろう。
そういうことを思いながらカメラを手に取り、カシャリと一枚シャッターを切った。