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エルの大論争

blue line in chicago
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シカゴダウンタウンで車を持っていない人の足は主にCTAである。

バスと電車が網の目のように市街まで網羅している。郊外も同じ仕組みである程度のところまで行ける。

ここで、一つ大きな論争がある。「eL」か「L」か。





ダウンタウンの中心部を環状に走っているループ(Loop)の中の地域ではCTAと言えば電車のことをイメージする。ループから少し離れると電車とバスの両方がイメージされ、ダウンタウンから離れるほどバスが主流になる。

CTAの電車のことをシカゴアン(Chicagoan)は「el」と表記しているが、Loop自体のことを「L」と書いてあるのを見たことがある気もする。

シカゴアンのESLクラスの先生は「el」で大方間違いないという。ダウンタウンの線路は地上部にある。市街に行くと地下に潜り、ところどころ地上に出て、最後はほとんど地上となる。エレベーティッドの「el」。高低差があるというような意味らしい。

そういえば、CTAのシカゴアンは乗客も運転手もバスや電車自体も曲者ぞろいだ。おとぼけ話がつきることはない。

ある日、バスに乗ろうとバス停に向かうと既に発車したバスの後ろ姿が見えた。少しがっくりしながら、次のバスを待とうとバス停に佇むと隣のご婦人が話しかけてくる。

次のバスまで少し時間があるわねという問いかけに同意したのが皮切りとなった。早速、アンラッキーだった仲間にされ、矢継ぎ早に、歩くのが億劫な話、バスを待ちすぎて乗り継ぎ料金を損してしまった話、ブラブラブラブラと愚痴とも世間話ともつかない話が延々と続く。30分経っても話は終わらない。そして、定刻にバスは来ない。傍を見ていてもお構いなしに延々と続く話。

ンフウン、アハアンと白目で一応うなずきながら耐えていると、突然、ご婦人は話を途中で切り上げてすっと何事もなかったかのように立ち上がる。目線の先には待望のバス。同じ行先が2台。

こういう日常にすべてをすぐに忘れることにも慣れ、そそくさとご婦人の後を追い、キレイで空いていそうな方のバスに乗り込んだ。