ノスタルジック, 今日のいい写真, 写真を語る試み

間違いのようで間違いでない

fake police car
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店の前の駐車禁止の黄色い縁石のエリアにポリスカーが止まっているのが見えたので、チケットを切られないように慎重に少し離れたところに車を止めた。

この店はThrift Storeというセカンドハンドショップだった。節約のために買い物をする人もいれば、ビンテージなどの掘り出し物を探す人もいる店である。貧困層を助ける意味合いもある店なので若干治安を悪くする人も出入りしているように感じられる。





こんな地域なのでポリスカーが巡回に来てもおかしくない。警官は本当に大変な仕事をこなしている。そちらを優先させる必要もあり、いつも我が物顔のような動きなので、駐車禁止のエリアでもお構いなしで止めていたのかもしれないと考える。しかし、この車、仕様はポリスカーのようだが、よく見ると至るところがボロボロで車の周りにも社内にも警官の姿はない。そして、頭上のいわゆるパトランプがない。

この場所に車を止めるのは大抵この店に来るためだ。この車が警察ものだったならばこのエリアで何か問題があったのかもしれない。それともこの車の主もここに何かを買いにこの店に来ているのか。と、詮索をしながらこの一枚のためにシャッターを切った。

昔のアメリカ的なイメージが印象深い映画「ブルース・ブラザーズ」の舞台はシカゴだった。彼らは、劇中で$500で中古のパトカーを買った。ストーリー自体はよく覚えていないが、アメリカ的なワイルドな一面を垣間見た気がして憧れを抱かせる一場面だった。

ポリスカーやタクシーに使われる車は大抵同じような車種だ。それは、当時でも今でもあまり変わらないと思う。そういういわゆる商用車の中古ばかり扱う店がシカゴにも数か所ある。

扱われている車を見ると、パトカーだった車、タクシーだった車、役所で使っていた車などが主な様子だったが、大抵同じような車種が並ぶ。ボディーの名称などがあったと思われる部分が雑に消されて何に使われていたか一応隠してあるものも多いが、覆面パトカーだったかもしれないと思わせるロゴの入ったホイールをはいていたり、中にはChicago Policeなどと堂々と書いてあるものもある。大抵は内外ともにボッロボロだったがまだまだ乗れる程度の頑丈さを感じる。なんだかアメリカ的なワイルドな憧れを感じる雰囲気だ。

このアメリカンドリームのことをもっと知るために勇気をふり絞って店の人に尋ねる。値段は一律$5,000というような感じだった。現金で買ったりする場合などはもう少し値引いてくれるかもしれないが定かではない。これでも十分安いと思うが、映画の時代とはお金の価値が違うので具体的な数字というのはこんな感じなのかと妙に納得した気分になった。

店の前にあったこの一台は、確かにパトカー丸出しの一品であった。パトライトを外しただけでペイントやホイールはそのまま。厳密には現役のポリスカーではないが物品としてはポリスカーではあることは間違いない。元ポリスカーと言うべきか。そんなことはどうでもいいか。

アメリカでは車を買うとそのまま置いてあった車を乗り出して帰るのが一般的な慣習だ。大抵どんなディーラーでもその場で乗り出しできるような手続きができる登録システムになっている。そんな嬉しいシステムを国がサポートしている。その元パトカーも乗り出しだったのだろうと思う。蛇足だが、後にパトカーならばナンバーはMから始まるということを知った。

ただなにも気にしない人が耐久性のある安い車を買い、生活用品を安く手に入れるためにそこに停まっていただけなのか。それとも、趣味でこだわりの車を手に入れた人がここに掘り出し物を探しに来たのか。

このオーナーには、この車にアメリカンドリームを感じ、現実に警察が使っていたままのクールな車に乗っているということで自慢気な気分でいてほしいと心の隅で妄想がよぎる。

しかし、現実は本人しか知らない。