語る写真の試み

UMAの影は長年池を守り続けている巨大な池の主だった



夏のある日、池に掛かった橋を渡っていると池の水面がゆっくりと大きく動いているのに気づいた。

体の一部を水面に出しながら悠然と移動していく巨大な影。

その姿は正に今流行りのUMAのよう。

そんなことを思うと冗談っぽい楽しさに心が躍る。





よく目を凝らしてみると見え隠れしているのは頭と体の一部のようだった。

巨大なUMAのように、そして、忍者のように池の揺らぎに紛れ巨大な体を池の中でゆっくりと移動させている。

その正体は巨大な鼈。

知っているスッポンよりとてつもなく大きいと感じた。


井の頭池は吉祥寺駅の程近くの井の頭恩賜公園にある。

後日、定期的に池の水をすべて抜き外来魚を駆除するかいぼりの活動をしている方にたまたま井の頭池の巨大鼈の話を伺ったところ、それは池の主らしいということが分かった。

やはり知っている人は知っている。

この知る人ぞ知る主は長年池を守り通してきた守り神なのかもしれないとその計り知れない神聖さの包容力に思い至り感慨が胸に迫る。

今は人の手も人なりに池の姿を守るべくかいぼりという努力を精一杯している。

冬のかいぼりの時期には人の手で無事に保護されているのだろうか。

それともどこか居心地の良いところで息を潜めて水と春を待っているのだろうか。

そんなことを考えながら悠然と池を闊歩する井の頭池の主の後ろ姿を思い返すと少し複雑な気持ちが心を揺らした。