語る写真の試み

静かに凍てついた街



ローカルの朝のニュース番組で天気予報を見るために点けっぱなしにしていたテレビから警報音が流れる。

”今日は外が危険な寒さとなっています。できるかぎり外に出ないでください。”

不快な電子音と共に繰り返しそんなようなメッセージが流される。

外は華氏マイナス20度の世界。摂氏ならばマイナス30度前後くらいだろうか。





温かい部屋の中にいるうちからできるだけ肌が出ないようにするためにファーの付いたフードのある長めのコートを着込む。

服の間にとどまっている部屋の暖かい空気の熱が逃げないうちに足早に車庫へと急ぐ。

エンジンをかけ、リモコンでシャッターを上げると外ではオレンジ色の朝日が凍てついた街を照らしていた。

バリバリと張り付いた氷を破りながら不穏な音を上げるシャッター、氷がへばりつく壁、垂れ下がる氷柱、溶けない路上の雪、凍った路面、彫刻のような氷漬けの雑木。

夜のうちにゆっくりと凍てついていった街の静かで張り詰めた寒さが視覚からも伝わってくる。


氷があるのは別に誰かがこっそりと水を掛けたからではない。

空気中の水分が何らかの原因で居心地の良いところに纏わりついて凍っていったのだと思う。

氷の見えない壁も、氷の見えない道も、目には見えないシーンと冷たく硬い空気さえも凍っているに違いない。

そして、延々と溶けない路上の雪も、夜の寒さで姿を現した氷さえも、更なる低気温の中で空中の水分が凍ることで極度に乾燥した空気に水分を取られ蒸発しつつあった。

道で長く一所に立ち止まると革靴を通り抜けて足の裏から凍気が侵食してくる。

バス停で待つ人々は思い思いに足を入れ替えながらゆらゆらと一定のリズムで揺れ動いている。

まばらに街行く人は空気に触れるとまつげも耳も肌も凍ってくるので怪しい眼だしルックで足早に過ぎ去っていく。

凍った空気は深く吸い込むと肺にダメージを与えるので息を吸うのさえも危険だ。

知らなければ危険な寒さだと恐れる人もいるだろうが、摂氏0度でも暖かいと感じるというこの街の人々はそれも含めてこんな日も平常運転の様子。