語る写真の試み

降らない雪



降らない雪。ここでできた雪の結晶。朝の車のフロントガラスのいたるところに雪が留まっているように見える。無数の結晶が朝の光に照らされる。

夜、空気中の水分がガラスについた何かを核に時間をかけて凍っていった。外では凍てつく空気がそこにあるものすべてを凍らせてしまったかもしれない。

朝焼けに映えるその結晶は、そんな夜も忘れさせ、雪が永遠に留まっているかのようにさえ錯覚させる。





極寒の朝。温かいリビングの大画面テレビに外出注意のアナウンスが流れる。外はマイナス20度を下回る気温。そこにあるものすべてをじっくりと凍てつかせる。

オーバーコートの下に残る部屋の暖かい空気を逃がさないようにしながら足早に車に向かう。吐く息もすぐに凍るように感じるくらい外の空気は冷たく固い。

何とか冷え切った車内に潜り込み、エンジンキーを回しながら朝の景色に目を移す。車のフロントガラスに無数の雪の結晶が見える。外からは朝焼けの空が大きな無数の結晶を照らしている。降っている雪ではない。そこに永遠に留まる絵画の中の雪のよう。しばし見入る。

エンジンがかかり、車内が温まりはじめると、しばらくして永遠の雪はゆっくりと儚く消えていく。

最後にワイパーが水に戻った結晶を一掃して視界を生き返らせる。

さあ今日も出発だ。