語る写真の試み

迫りくる重い雲



それは突然やって来る。荒れ狂ったような勢いの巨大なグレーの塊が地表の街を飲み込む。

あれよあれよという間に辺りに立ち込め、こちらに巨大な壁となって迫る。行くものの視界を奪う。逃げ場はない。





北米五大湖の湿気を十分に含んだ重い雲が街をまるで地を這う巨大な生き物のような動きで飲み込んでいく。どこかで見た世紀末の天変地異を描いた恐怖の絵画のようなイメージ。

重い雲はやがてシカゴのダウンタウンを覆いつくす。空を突き刺す摩天楼の一角だけ天空の城のように姿を現すところが遠くから見える時もある。そこからの眺めは荒れ狂った雲海に違いない。

雨が降るわけでもない。風で荒れるわけでもない。ただ、地表の存在すべてが静かに雲に覆い隠されるだけ。

そして、日常は何も変わらない。