語る写真の試み

警戒の視線の存在



遅めの春、緑の中の小道を横切る蛇。

こんなところにいるということは活動を始めたばかりで寝ぼけているのだろうか。

見ていると竹でできた垣根の支えをスルスルと器用に登っていく。

思いのほかのんびりしている蛇に気づかれないように近づく。





垣根の中腹で蛇の動きが緩慢になったので、そっとカメラを近づけた。

その瞬間、蛇の動きがピタリと止まる。

ピクリと蛇の視線がこちらを向く。

じっと蛇がこちらを見ているのを感じる。

自然と指がシャッターを切った。


次の瞬間、体を縮め顔の正面をこちらに向けた。

今にも飛び掛かれるように姿勢を整えた様に見えた。

緊張の瞬間。

静かにカメラを引っこめるとくるりと元の姿勢に振り向き直り、また竹に絡まりながら進み始めた。

去っていく蛇の進むスピードは気持ちさっきより早いような気がした。

シャッターチャンスに纏わるほんの一幕。