語る写真の試み

料理を作らないクッキングクラス



料理を作らないクッキングクラス。あるんです。

有名なプロのシェフが作るところをただ座って見ているだけ。そして、ワイン片手に食べるだけ。決して自分で料理することはない。





シカゴの有名なマーケットプレイスの建物であるマーチャンダイズマートで開催されたクッキングクラスだった。普段は、様々な業種のショールームが店子として入り、季節ごとに大きな見本市や業界のマーケットなどが盛んに行われている。

会場は、大きな鏡が頭上にあり料理人の手元がよく見えるようにしてある巨大キッチンカウンターを舞台のように配置し、レストランのようにのんびりとセッティングされた4人用の丸テーブルが余裕をもって並べられている。

シェフが手際よく料理をしている間、好みのワインを片手にナッツをつまみながら、料理カウンターの頭上にある大きな鏡でシェフの手さばきを観察し、出来上がったものを食べるという会である。どちらかというと料理ショーと言ったほうがしっくりくるかもしれないが、ネーミングはクッキングクラスだった。

参加者は、世界の一流コンサルティングファームの人と思しきビジネスパーソンたち、中西部の遠方から来たと思しき裕福そうな一団、金持ちの仲良し同士のような男女グループなどちょっとセレブ的な雰囲気のある観覧者たちだった。100ドル払って料理をするのを見るだけのクッキングクラスに参加するということは、少なくとも料理に対する興味関心があり、そして、何より余裕があるということなのか。もしくは、人前で料理をしないのかもしれない、または、する必要がない人種なのかも知れない。

時間になると、シェフが颯爽と登場し、本日のメニューにあるポーク料理を作りはじめた。時折、料理の様子が分かるように手元が見えやすい形で説明を加える。アメリカの料理も結構な小技を駆使しているということが分かる。なかなか侮れない。

中西部の遠方から来たと思しき一団にいた主婦層は、やはり料理熱心で、事細かに質問をしたり、手元のレシピと舞台のショーを見比べながら納得いたりしていた。中西部の人らしく、もしくは、主婦らしく、それにしてもよくしゃべる人たちだった。

料理も出来上がってきて、盛り付けの段階になると助手らしき人も登場し手伝ったのだが、なかなか先生の思い通りにうまくいっていなかった様子で、途中で先生に愛想をつかされて盛り付けを交代するような場面もあり、微笑ましかった。料理の職人を感じさせる出来事でもあった。

助手の人は、クラスが終わるとキッチン周りをピカピカに磨きあげていた。料理に関する仕事にとって清潔にするということは最も重要なことの一つである。これは、日本もアメリカも変わらない。なんだか、すし屋の修行を想起した。

終盤に近づくと、食べ物の量はたいしたことはなかったが、時間をかけながらゆっくり食べたせいかおなかも満たされ、ワインは飲んでいなかったがいい気分になっていた。

見て楽しみ、食べて楽しいひと時であり、少しアメリカの料理人の秘密を知った気分になることができたクッキングクラスであった。